鎌仲監督ブログ

六ヶ所村通信 no.3

※各画像をクリックいただくと、詳しい情報がご覧になれます。

六ヶ所村通信no.2に引き続き、no.3は2004年秋の終わりから2005年早春までの取材スケッチです。

オープニング

 12年前にサラリーマンを辞め、実家の農業を継いださそう哘さんはトマトの出荷で大忙しです。今年はいいタイミングで収穫量が多かったので「苦労した甲斐があった」と言う哘さん。原子力政策を推し進める一方で農林水産業の強化を唱える県は矛盾していると考えています。

 3年前から哘さんが所属するとうほく天間農協の名前で、六ヶ所村の農産物が売られることになりました。これによって支払われた電源立地特別交付金でとうほく天間農協はベルトコンベアを購入しました。哘さんは農協の設備もできれば交付金に頼りたくないと考えます。また一消費者として、自分も原発や再処理工場で事故が起こればそこの農産物は買いたくないと言います。そしていつ青森県がそういう立場になるかを懸念します。

風評被害についての勉強会

 とうほく天間農協の青年部部長を務める哘さんは再処理工場に関する風評被害についての勉強会を開催しました。青森県エネルギー課の職員とフランスにある再処理工場周辺の住民をフランスから招きました。青森県職員の八戸さんが専門的な話は原燃に直接聞いてほしいとコメントしたことに対して農業を営む苫米地さんが訴えます。私達のことを守ってくれるのであればもう少し私達の心配を取り除く努力をしてほしい。

 フランスの漁師ジャックさんは原子力は重要なエネルギー源かもしれないけれど、子孫にとんでもない負の遺産を残すことになる、と訴えます。グリーンピース・フランスのヤニックさんは国で定められている安全基準そのものの曖昧さを指摘します。

産直野菜販売

 ウラン試験が始まってしまう前に何かしたい。哘さんと再処理に反対する仲間達は直接消費者に訴えるために「放射能のかからない最後の野菜」の産直販売をすることにしました。賛同して野菜を買ってゆく人、「放射能のかからない最後の野菜」という言葉にびっくりする人とお客さん達の反応は様々です。青森に再処理工場があることに不安を抱きつつも「今から言っても仕方ない」というお客さんに苫米地さんは語りかけます。「諦めないでがんばろう、だって放射能ついたの食べたくないっきゃね」

 2004年12月21日、ウラン試験が始まりました。

京都大学 小出先生

 日本の総電力の3分の1が原発で作られています。原子力発電にはどのような長所、短所があるのか京都大学で原子力を研究する小出先生を訪ねました。原子力の力を信じて原子力の専門分野に踏み入った小出先生でしたがやがて自分の信じていたことの間違いに気付いたと言います。日本の原発が作った死の灰と呼ばれる核分裂生成物は今や広島原爆90万発分以上に上り、そこからプルトニウムを取り出すのが今六ヶ所村で行われようとしている再処理だ、と説明した上で、猛毒なプルトニウムが使えるような社会を作ってはいけない、と言います。また、原子力発電所は海を温める装置であり海の環境破壊につながっていることを強調します。

防災訓練

 六ヶ所村が大雪に見回れた二月、年に一回の防災訓練が行われました。火災が起き放射性物質が大気中に放出されたという想定です。非常ベルが鳴り響く中、災害管理センター内では職員達が現状の報告やデータの分析をします。六ヶ所村にある小さな集落、室ノ久保では中学校に村の人たちが避難していました。これが本番だったもっとパニックになっている、と言う住人。実際に何が漏れたのかという質問に専門語が多くてわからないと答えます。バスで別の避難所に移動すると白衣にマスクをした職員達が体に放射能がついたかどうか、被ばく線量を測ります。原子力安全研究協会の青木さんは村の人々に雪のひどいときには放射能が近くに落ちると説明します。この日は赤ちゃんや妊婦さんのためにヨウ素剤も用意されていました。

泊の勉強会

 泊集落では日本原燃の職員を講師に迎え、定期的に勉強会が行われています。日本現燃渉外部長の伊藤さんがウラン試験や世界のエネルギーの状況について説明します。当初は参加者が3名しか集まらず、皆居眠りをしていた、ととまりクリーニングの小笠原さん。それでも何も分からないで怖がっていては仕方がない。きちんと理解して議論をしたい、という思いからはじめた勉強会は3年目を迎えました。農業者の心配も分からないわけじゃないけれど、もう少し勉強して風評被害で野菜が売れないことのないように、もっと売る努力が必要ではないか、と建設会社で働く上野さんは言います。

高レベル廃棄物搬入

 2005年4月20日、フランスから高レベル廃棄物が返還されてきました。フランスの再処理工場で処理した後に残った最も放射能毒性の高い核廃棄物で、これから何百年も厳重に管理してゆかなくてはなりません。菊川さんは今の科学にはこれらをしっかり管理してゆける技術があるとは思えないと言います。核燃反対の人々が港に来ていました。山内さんの太鼓が響き渡ります。